現代アート×デザイン×法律、三つ巴の夜|弁護士カフェ Vol.37 レポート

弁護士カフェ Vol.37を開催しました。今夜のゲストは、デジタルデザインの世界最高峰「Webby Awards 2025」最優秀賞受賞のデザイナー/アートディレクター・大谷真以さん。「アートの美の境界線は、誰が決めるのか」——法学部出身のクリエイターが語る一夜は、参加者誰もが予想しなかった展開へと転がっていきました。

弁護士カフェは、弁護士・北永久さんが主催する毎月の交流会。法律相談の場ではなく、弁護士をはじめとするさまざまな専門家と地域の人々が、食事とお酒を片手に自由に語り合う空間を目指しています。今回で3年・37回目の開催となりました。

ゲストの大谷真以さん
法学部から未経験でデザイナーに転身し、世界的なアワードを受賞するまでに至った大谷真以さん

法学部から世界へ——「楽しいを仕事にする」を本当にやった人

大谷さんの経歴は異色だ。明治学院大学法学部を卒業し、法律事務所での内定者アルバイトを経験したある日、「一度きりの人生、楽しい仕事がしたい」という思いが溢れ出した。周囲の猛反対をよそにデザイナー転身を宣言し、1Kのシェアオフィスから株式会社ONを創業。ウェブ・映像・グラフィックの制作会社としてスタートし、今期で15期目を迎えた。

今やWebby Awards、Awwwards、FWAなど国際的なデザインアワードを総なめにするクリエイティブカンパニーに成長。昨年は自ら取締役社長に就任し、「世の中をもっと勉強しなきゃ」と早稲田大学大学院(MBA)にも在学中だという。「他の企業で働いたことがないから」と笑って話す大谷さんのことばには、何かを掴んできた人の静けさがあった。

会場でトークする大谷真以さん
「楽しいを仕事にする」——軽いことばのようで、15年かけて証明してきた重さがあった

美の境界線——空間を作品に変える表現

トークが盛り上がるなか、大谷さんがパソコンで見せてくれたのは、もうひとつの創作活動だった。スクリーンに映し出されたのは、国内外で制作されてきたインスタレーションアートの数々。空間そのものを作品として捉え、見る人の感覚や解釈によって表情を変える表現だ。

これまでデザイナーとして活動するなかで、Webサイトやグラフィックなど2次元の表現に携わる機会が多かった一方、「空間そのものを使った表現」にも強い関心を抱いてきたという。

既存の価値観では捉えきれない表現だからこそ、「アートとは何か」「美しさは誰が決めるのか」という問いが自然と立ち上がる。その問いは、奇しくも今夜のテーマとも重なっていた。

来た人だけが知っている、あのひとときへ

夜が更けるにつれ、会場の会話はますます盛り上がっていった。法学部からデザイナーへ、そして経営者へ。世界的なアワードを受賞しながらも、今なお学び続ける姿勢。そして「アートとは何か」という問い。参加者それぞれが、自分なりの気づきや刺激を持ち帰ったようだった。

美の境界線は、誰かが決めるものではないのかもしれない。多様な価値観に触れ、その輪郭を少しずつ広げていくこと。その時間こそが、この夜の醍醐味だったように思う。

弁護士カフェは毎月開催中。次回もぜひ遊びに来てください。

当日の様子