まちの「関わりの場」をつくる|弁護士カフェ Vol.34
桜がほころびはじめた3月末、Vol.34を迎えた弁護士カフェ。神田川の桜並木が万回を迎える中、今夜も多彩なメンバーが我楽田工房に集いました。
弁護士カフェは「飲んで備える」がコンセプト。弁護士をはじめとする専門家と顔なじみになり、いざという時に相談できる関係を日常の中につくることを目指して月1回開催しています。

今回のゲスト:土居洋平さん
今回のゲストは、跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部教授・地域交流センター長の土居洋平さん。「コミュニティ」をテーマに15年以上フィールドワークを続けてきた研究者です。
もとは食の社会学から出発した土居さん。冷凍食品の普及がチェーン展開を可能にした、という修士論文を書いた後、農山村への移住者たちの取材をきっかけにコミュニティ研究へと軸足を移しました。移住者たちが口にしていた言葉が印象的でした。「村ではちゃんと人として扱われる。固有名詞でいられる」——その感覚が、土居さんの研究の核心になっていきます。
しがらみから自由になった先に待つもの
近代化とともに、人々は地域共同体の「しがらみ」から解放されました。しかしその自由の先に待っていたのは、理想的な繋がりではなく、孤立や孤独でした。かといって昔のような丸抱えの町内会に戻ることも誰も望まない——土居さんが問い続けてきたのは、この矛盾をどう解くかです。
彼が注目するのが「開かれた関わりの場」です。来たいと思えば来られる、かかわりたくなければかかわらなくていい。強制のないゆるい場所が複数あって、そこに好き勝手出入りしているうちに、なんとなく繋がりが生まれていく——それが現代的なコミュニティのあり方だと言います。
「コミュニティキャピタル」——HONGO22515の奇跡
土居さんが提唱する「コミュニティキャピタル」という概念。社会関係資本(ソーシャルキャピタル)をより小さなローカルな場に当てはめた造語です。
その好例として挙げたのが、本郷にある地域の拠点「HONGO22515」。たびたび存続の危機に立たされながらも、毎回乗り越えてきたこの場所。オーナーの竹形さんが「もう閉鎖します」とフェイスブックに投稿した翌日から、リターンなしの投げ銭が集まりはじめ、6日間で150万円が集まったそうです。「これは愛着じゃなく、資本として機能している」と土居さんは語ります。ここで蓄積された繋がりが失われることへの損失感が、人を動かす力になる——それがコミュニティキャピタルです。
文京区にはこうした「関わりの場」が点在しています。それぞれメンバーが完全には重ならないけれど、ゆるくつながっている。土居さんによれば、そういう場所に好き勝手出入りするうちにネットワークの波紋が広がっていくのが、現代のコミュニティの姿だといいます。

この夜、偶然にも会場には「先生」と呼ばれる人が3人並ぶ場面がありました。土居先生、弁護士の北さん、そして元家庭科の先生・楢府さん。肩書きも専門もバラバラでも、こうして同じテーブルを囲んで語り合える。それ自体が、「関わりの場」の豊かさそのものでした。
弁護士カフェは毎月1回、我楽田工房にて開催中。専門家や多彩なゲストと「飲んで備える」この場に、ぜひお気軽にご参加ください。



