エンジニアが社会課題を解決する「地方創生VI2020」を株式会社VSNと開始しました
世は、VUCA時代。
近年、社会活動や地球環境の変化により、新しい価値観や事業が次々に生まれる時代に突入しました。先の読めない不確実な時代では、今日当たり前だと思っていた前提が明日には変わっているかもしれません。
新たな時代のリーダーを育成するために昨年から動き出した、地域に飛び込み社会課題に挑戦する人材「ソーシャルチャレンジャー」を育成する企業研修プログラム。
昨年から、世界最大の人材サービス会社アデコのグループ会社である株式会社VSNと共に、エンジニアが社会課題を解決するプロジェクト「地方創生VI」に取り組んでいます。 VSNは4000名を超える正社員エンジニアを擁する技術系人材サービス会社。今年は「地方創生VI2020」を全国10地域で展開していきます。
実際に地域に入ってフィールドワークを始めるにあたり、事前研修を実施しました。
全4回の講義のうち、初回は慶応義塾大学の非常勤でもある広石さんが講師となり、「2030年に向けて求められるイノベーションの力とは?」をテーマに研修を行いました。
[wall]▲広石 拓司 株式会社エンパブリック 代表取締役
東京大学大学院薬学系修士課程修了。シンクタンク、NPO法人ETIC.を経て、2008年株式会社エンパブリックを創業。「思いのある誰もが動き出せ、新しい仕事を生み出せる社会」を目指し、地域・組織の人たちが知恵と力を持ち寄る場づくりと、社会課題解決型の事業開発や起業に役立つプログラムを提供している。近著に「ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12のステップ」。東京都生涯学習審議会委員、慶應義塾大学総合政策学部、立教大学大学院などの非常勤講師も務める。[/wall]
10年で世界経済の前提は大きく変わる
現代人の生活を支えているコンピューター、インターネットが普及し始めたのは1980年代でした。それから30年で産業構造は大きく変化し、世界の時価総額ランキングでもGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)を筆頭にIT・テクノロジー関連企業が台頭するようになりました。
iPhoneが2007年に登場してからたった10年で、日本の70代以上のスマホ所持者はガラケー所持者をすでに上回っています(NTTドコモ モバイル社会研究所, 2019年)。
新たなテクノロジーが次々に生まれ、凄まじいスピードで変化する社会では、変化が起こってから行動していては取り残されてしまいます。だからこそ、自ら変化を起こし、世の中の変化とともに仕掛けていくことが必要です。
しかし、社会の先陣を切って新しいことを始めようとする時には、前例がありません。これをしたら成功する、という答えがありません。
答えのない領域でチャレンジをするためには、自分だけが考えていちゃわからない。だから、同じ問題に向き合う仲間との対話プロセスがとても大事です。
うまくいかない時にも、相手がどんなことを考えているのか、どんなことを望んでいるのかを考え、寄り添い、潜在的なニーズを引き出す。そして共通のビジョンを描き、共に社会を変えて一歩が踏み出せます。
トヨタはなぜ、まちづくりを仕掛けるのか?
世界最大の自動車メーカーであるトヨタが今年の1月に発表した「Woven city」。静岡県裾野市で工場の跡地を活用し、あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」をつくるプロジェクトです。従業員や研究者を含めた2000人が移住し、新たな街を作ろうとする壮大な構想ですが、なぜ、トヨタがまちづくりを始めたのでしょうか?
研修参加者の方々にも考えていただき、「車が売れないから町を売ろうと思ったのでは」「自動運転が生活に与える影響を調べたいのでは」など様々な意見が出てきました。
広石先生のおっしゃるには、トヨタの一番の目的は仲間づくりにあります。
実際、公式HPにて「もっといい暮らしとMobility for Allを私たちと一緒に追求していきたい方すべての参画を歓迎します」というメッセージを社長が自ら発信しています。
大量生産・大量消費の時代も終わり、少子高齢化社会を迎えた日本で、車を作れば売れる時代ではなくなってしまった。自動車を作っているだけでは10年後はないという危機感があるからこそ、「新しい車を作る」ではなく「新しい街を作ろう」という新たなビジョンを社会に提示して、行政やエンジニアだけでなく、いろんな人たちが興味を持ってくれそうなプロジェクトを打ち立てた。
そうすることで、何かトヨタとやってみたいという人たちとタッグを組んでいくことが、トヨタの狙いなのではないでしょうか。
実は裾野市に先月伺う用事があり、職員の方ともお話させていただきましたが、どんなことが始まるのかワクワクしている方が多い印象でした。2021年初頭から始まる着工に向けて、まだまだこれからの段階ではありますが、今後が楽しみなプロジェクトです。
社会が変わらない前提であれば、馬車の時代に車は生まれなかったでしょう。より速い馬が必要とされるから。ガソリンで走る車の時代に電気で走る自動車は生まれなかったでしょう。より燃費のいい車が必要とされるから。
重要なのは、社会を深く観察し、関係者と対話を繰り返しながら、未来をイメージし、ビジョンを提示していくことです。
SDGsでは「Transforming our world」つまり世界を変革することを謳っていますが、現状の問題解決をしていくだけでは、本当の意味で世界は変わりません。問題は永遠に無くならないからです。今必要なことは、今とは全く違う世界になることを前提として未来を構想していくことです。
たった30年で、テクノロジーは世界を作り変えました。これを武器にできれば、たくさんの可能性があるはずです。
ソーシャルチャレンジャー育成プログラムでは、テクノロジーを社会実装しながらこれからの未来を作っていくパートナーをつなぐ仕事です。チャレンジをするためのフィールドは、私たちの繋がっている地域にあります。
リアルな課題を体感し、生活者とともに未来を作っていく。
そういったプロジェクトにご興味のある企業の方、自治体の方はぜひご連絡をお待ちしています。
担当:坂井(sakai@bono.co.jp)
◆ソーシャルチャレンジャーHP
https://garakuta.tokyo/socialchallenger