山梨県甲州市で「半農半X」のライフスタイルを実践している鶴岡舞子さんに「野草文化」や「移住」への思いを聞く

こんにちは!澤です。
夏休みがあと1日で終わるという事実に衝撃を受けています。

さて、今日は山梨県甲州市塩山にある、「摘み草のお店 つちころび」のオーナー、鶴岡舞子さんのインタビューです!

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東京生まれ・東京育ちの鶴岡さんは15歳の時に就農を志し、9年前に山梨県甲州市に移住しました。
その後、地域おこし協力隊を経て、先月、野草を使った商品の販売や、カルチャースクールなどを行う野草専門店をオープン!
現在は、果樹栽培で農業に携わりながらお店を運営するという、「半農半X」のライフスタイルを実践しています。

移住のきっかけや、日本の文化であり大切な地域の資源である「野草文化」への思いなどをお聞きしました!

摘み草のお店・つちころびとは?

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インタビューに入る前に、鶴岡さんのお店と野草文化についてご紹介しましょう。
「摘み草のお店・つちころび」は、全国各地の野草、薬草の情報を知ることができるお店。
中に入ると、手摘みの野草を使ったオリジナル商品が並んでいます。

野草は大切な地域資源

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東京農業大学在学中から、「工芸作物」の分野を勉強していたという鶴岡さん。
山梨に移住してからは、趣味で野草の勉強をしていたそうです。
様々な知識を学んでいく中で、普段は「雑草」として悪者扱いされているものにも実は薬効があり、民間薬として様々な活用ができることを知りました。

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(テレビ山梨から取材を受けている様子)

さらに、お店がある甲州市塩山には、江戸時代は幕府の直轄領で、「甘草」という生薬を栽培して納めていたという歴史があります。
このような歴史を持つ地域は日本でここだけなんだとか。

しかし、甘草は生薬として使われる立派な薬草であるがゆえに、様々な壁が存在しています。
薬事法など法的な問題、収穫までに時間がかかる栽培方法、換金性が低く、産業に結びつかないなど…。

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これらの理由から、甘草を地域資源として活用するのはなかなか難しいと判断。
それよりも、山菜や薬味として使われる身近な山野草を「日本のハーブ」として活用し、文化として伝えていけないかと考えたそうです。
また、近年、農家の高齢化に伴い雑草地化した農地が増加しています。これらを有効活用するという目的で、野草を利活用する活動を始めました。

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空き家を自らの手で改装したというお店は、とってもほっこりする空間。
野草のお茶をいただきながらお話ししていると、いつの間にか時間が経っていました。

鶴岡さんインタビュー

それでは、インタビューに参りましょう!

中3で農業を志す

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ー 農業を志したのは、何がきっかけだったんでしょうか。

鶴岡 農業を目指したのが割と早くて、15歳の時だったんです。中3の時に、初めて進路指導室に入って、自分が将来、どんな進路を歩みたいか考えたんですね。
私はずっと東京住まいだったので、何をするにもお金に支配されているような感覚があって。

さらに当時は大不況のまっただ中で…。いつ貨幣の価値が変わってもおかしくないと言われている中で、お金に左右されないで生きていける道って何なのかなって考えたときに、食べるものがキーワードかなって思ったんです。

ー それを中3で悟るってすごいと思うんですけれども(笑)

鶴岡 うん、早かったね。それで「東京」の看板を背負って農業を勉強できることに魅力を感じて、東京農業大学への進学をずっと熱望して、無事に試験に合格することができました。だから、農業を志した時点で東京を離れる気持ちはありましたね。

山梨への移住と地域おこし協力隊のきっかけ

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ー 山梨に移住したきっかけは何だったんでしょうか。

鶴岡 大学卒業後、甲州市にある民間の社会教育施設に就職したんです。林間学校でやってくる子供たちに、農業や郷土料理、キャンプ体験とかを提供していました。
でも、やっぱりずっと志してきた農業に携わりたくて。その後、農業生産法人で果樹栽培に関わったのですが、色々な壁にぶつかってしまったんです。一旦東京に戻って住民票なども全部移してしまったのですが、再起をかける思いで2011年に甲州市の地域おこし協力隊になりました。

ー やはり農業と山梨への思いは強かったんですね。その中で、なぜ地域おこし協力隊を志望されたですか。

鶴岡 農業生産法人では果樹栽培で独立しようと頑張っていたのですか、自分が本当にやりたい活動って何だろうと考え直していた時期があって。その中で地域おこし協力隊の話が出てきたんです。

で、それまでずっと野草のことを勉強してきて、農業の世界では悪者扱いされている雑草が、実は有用な植物であることを学んだんですね。
甲州市は塩山駅の前に「甘草屋敷」があるように、江戸時代に甘草を栽培していたという歴史があるにもかかわらず、地域資源としては全然活用されていない。
それをすごくもったいないと感じて、協力隊の事業としてチャレンジさせてもらうことになったんです。

工芸作物への思いと協力隊の活動

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ー 確かに、身近な「野草」のことって、身近すぎて逆に知る機会が少ないような気がします。

鶴岡 そうなんです。野草は工芸作物って呼ばれているものに入るんですけれど、染料に使われるものだったり、コーヒー、紅茶、サトウキビ…後は綿とかの繊維作物もそうですね。生活の中で生かされてきた作物のことです。
綿って昔は国内でも栽培が盛んで、何千種類ってあったんですけれど、今出回っている在来種は8種類くらいしかないって言われているんですよ。
それを知ると、残していかないとだめじゃんって。そういったことを知らなかった無知さに、日本人としてすごく恥ずかしさがあるんですね。

ー なるほど。それで、協力隊として野草の認識を広める活動をしてきたわけですね。3年間活動してみていかかでしたか。
(※地域おこし協力隊の任期は3年)

鶴岡 野草に関する活動を軸にしていたんですが、農産物の振興や県内移住者のコミュニティ活動もテーマとしてやっていました。
学校に行って出張事業をやったり、観察会を実施したり、全国の野草のことに取り組んでいるところを見に行ったり…
それを活動新聞で報告して、とにかく色々な活動をやりましたね。
割と自由に動かせてもらっていたので、最初は何が結果になるんだろうって苦しんだ時期もありました。
そういう意味では高いバイタリティを要求される仕事だったけれど、やっぱりものすごく楽しかった。今も市の行政との関わりはあって、甘草の復活プロジェクトの委員と、食育推進委員を務めています。

地域おこしは「人間力」

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ー 他の地域の協力隊とのつながりはあるんですか。

鶴岡 協力隊の「全国女子会」というものを開いて、全国の協力隊と情報交換をしたことがありました。
そういう、全国のネットワークができるのが協力隊の強みですよね。
みんな経験して、見てきた地域の課題って似通っていて。結局、地域おこしって人間力なのかなって。住んでいる人が、その地域を残していきたいって思うかどうかですよね。

地域との接点を持った「無尽」

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ー 東京から移住されてこういう活動を行ってきたわけですが、どういう風にして地域の中に入っていったんでしょうか。

鶴岡 私はかなり恵まれているほうだと思っていて。地域の習慣で、「無尽」っていう、地域の仲間内で定期的に集まってお酒を飲んだりご飯を食べたりする会があって。そこで地域との接点を持てて、地区のおじさんたちがすごくかわいがってくれたんですよね。
べたべたの甲州弁もそこで習いました(笑)

ー じゃあ、本当にすっと入っていけたんですね!

鶴岡 そうそう。
分かると思うんだけど、田舎で暮らすっていうことは、それだけプライベートをなくすことでもあるんですよね。そういう距離感をある程度理解しなければならない。
それが難しいとか、性にあわないっていう人には、こういう地域への移住っていうのはちょっと難しいのかもしれないね。

地域に定住するために…横のつながりを作ることが大事

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ー 都市部から地方への移住って、色々と直面する課題がありますよね。

鶴岡 今まで、せっかく希望を持って移住してきたのに、都市部へ帰ったり他の地域に行ったりした人たちをいっぱい見送ってきました。
適切なアドバイスや支援がもらえなくて、悩んだ末に山梨から出て行ってしまった人たちを。それってすごくもったいないことだと思ったんです。
一人でも多く山梨に定住してもらうには、やっぱり横のつながりが必要だと考えて、今は移住者同士のコミュニティを作って、定期的にご飯を食べています。
幅広い職業や年齢層が集まるんですよ。

ー 本当に様々な活動をされてきたんですね。今後はどんなことをしていく予定ですか。

鶴岡 直近では、このお店で野草スクールを始めます。
最初から無理はしないで、少しずつお店としての活動を広げていければと思っています。
自分は山梨を離れるつもりは全くないので、この地にしっかり足をつけて、ぶれないように物事を選択していきたいですね。
また学生さんとこういう話ができたら良いですね。

ー ぜひ、またどうぞよろしくお願いします!

最後に

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農業や地域おこしに関する課題をたくさん目にしてきた鶴岡さんの言葉には、どれも説得力があって非常に勉強になることばかり。
最近若い人たちの間でも関心を集めている地方への移住や就農に関しても、参考になるヒントをたくさんお聞きすることができました。
大事な地域資源、後世に伝えられるべき文化って、普段は気にも留めないくらいとっても身近なところにあるのかも。
それを後世に伝えていきたい、そして、地域に貢献したいという熱い思いが言葉の端々から伝わってくるインタビューでした。

鶴岡舞子さんインタビュー

帰り際に、棚の中で一際目をひいた「ねこじゃらしのふりかけ」。ねこじゃらしって食べられるのか…と衝撃を受け、購入しました。
猫になった気分で食べてみると(どうやら猫も食べるらしい)、塩との相性とぽりぽりした食感が良い感じで、毎晩のご飯のお供として活躍しております。
みなさんも、私たちの生活を支えてくれている身近な「工芸作物」に注目してみてはいかがでしょうか。
甲州市に行かれる際は、ぜひ鶴岡さんのお店を訪ねてみてください!(予約制なので、ご確認の上、ご来店されると良いと思います)

※写真は鶴岡さんよりご提供いただきました(「ねこじゃらしのふりかけ」の写真を除く)

摘み草のお店 つちころび
「摘み草のお店 つちころび」Facebookページ
山梨県甲州市塩山竹森1725-1 ※完全予約制
fukuneko01020169@yahoo.co.jp