OWNERS KITCHEN vol.1を開催。食農コーディネーターの目指す未来とは?

こんにちは!さすらいのチイです。

こだわり食材を事前登録することで、生産者と消費者の関係性を作りながら、最も美味しいタイミングで自宅に届けるサービス「OWNERS(オーナーズ)」。

ukkaが運営するOWNERSとコラボしたイベント「OWNERS KITCHEN -食と地域の未来を語ろう- vol.1」を、2月25日に我楽田工房で開催しました。
食や地域に対して想いを持ち活動する仲間と出会い、語り、ともに未来を創るための場所として、素材が際立つおにぎり・お味噌汁などをみんなで作って食べながら、都会と地方が連携する新たな仕組みを発信するシリーズ企画です。

キックオフとなる今回は、ukka代表の谷川・ボノ取締役の谷津が「食で地域をつなぐ」をテーマに対談しながら、地域おこし協力隊の制度を活用した「食農コーディネーター」の育成事業についてご紹介しました。

以下、イベントの様子を通して、ukkaとボノが連携して取り組もうとしている食農コーディネーターの目指す未来をお伝えします。

※地域おこし協力隊とは?
一定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や、農林水産業への従事、住民の生活支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組。(総務省HPより)

◆「本当にいいもの」を伝えるために

▲谷津 孝啓
ボノ株式会社 取締役

大手通信会社、菓子メーカー、電機メーカーの新卒採用・新規事業プロデュース・企業ブランディングを手がける。
都会在住の大学生と地方で活躍するキーマンを繋ぎ、継続的に大学生が地域に通う「まち冒険」を立ち上げ、3年間で500名の大学生と15の地域が交流する仕組みづくりを行う。
現在は地域おこし協力隊の地域での関係づくりツール「キーマンSTORY」を活用した起業支援など、地域コミュニティの活性化に携わる。
京都三大学教育教養研究・推進機構の宿泊研修のアドバイザーも務める。

谷津:
今回ukkaさんと事業連携して、食農コーディネーターという仕組みづくりを始めました。
どんな仕組みかというと、地域の生産者と首都圏の消費者の関係性を、生産者に寄り添いながら地域側で作っていく役割を、地域おこし協力隊の制度を活用して作ろうとしています。
コーディネーターの活動としては、地域に入り込んで生産者さんを発掘し、OWNERSを活用しながら広報支援、販路開拓やイベント企画などをサポートします。

言葉だけだとイメージしにくいと思うので、図をご覧ください。

谷津:
これがゴールイメージです。
「農業・水産業・加工業などに関わる地域の生産者と協力し、地域経済の活性化を図るコーディネーターを募集・育成する」ことを目的に取り組みます。

コーディネーターの人材として、地域おこし協力隊の制度を活用するので、一緒に連携できる地方自治体さんをまず募集しています。

地域おこし協力隊にも課題があって、任期中に仕事が作れないと、そのあと食っていけません。
例えば、弊社では着任後の研修なども行なっていますが、そこで協力隊員に事業計画を作ってもらいます。
事業計画がないと活動を仕事として評価してもらえないですが、事業計画を作ったことのある人はビジネスマンの中でも少ないですし、着任から2年たってもスキルを持っていない人は書けないんです。

この食農コーディネーターの仕組みを活用して、食・農に関係するスキルを身につける環境を用意できればと思っています。

[wall]▲谷川 佳
株式会社ukka 代表取締役 共同創業者

1987年大阪府岸和田市生まれ。
関西大学法学部卒業後、PR会社にて地域ブランディング・企画事業に従事。
その後、オーナー制度プラットフォーム「OWNERS(オーナーズ)」を構想し、2015年12月に株式会社エル・エス・ピーにてサービスをローンチ。
運営統括責任者としてサービス運営および企業とのアライアンスを推進。
2017年9月に株式会社ukkaを創業し、代表取締役に就任。[/wall]

谷川:
OWNERSの話をすると、利用する生産者の方は30〜40代が多いです。ITに慣れていない上の世代の人たちはなかなか使えない。
地域おこし協力隊と連携できると、まだまだ発掘できていない上の世代の生産者とも繋がっていけます。自社(ukka)で雇用しているわけではないけど、地域側でサポートしてくれる人がいたら、もっと都市と地方の連携を進めていけるのではと思っています。

谷津:
谷川さんからお聞きしたことで、OWNERSの販売方針で大事にしていることは、見栄えや形に捉われず、お客さんにとって「本当にいいもの」を見極めること。

単に食材だけではなく生産者のストーリーや発送方法だったり。市場では評価されない規格でも訴求ポイントを変えることでお客さんにとって価値ある食材になることもあるそうです。生産者さんはオーナーズに出すことで、新たな規格カテゴリが作れると。

今回お米とほうれん草を送ってくださった、秋庭農園さん

谷川:
事前予約スタイルにした時点で、わざわざ待ってでも欲しいものじゃないと登録してくれないと感じていました。
では「本当にいいもの」をどのようにPRしていくか、と言う話の例で、Short Legsさんという山梨の桃農家のチームがあります。

これまでほとんどJAに卸し、直販したことがなかった農家さんでしたが、これからブランドを作っていこうとなり、ただ何が価値になるかわからないと相談を受けました。JAにはJAの基準があり評価されてしまうけれど、それはお客さんの求める価値とは違うかもしれない。
どこのスーパーで見てもジュクジュクしている桃、やわらかい桃がスタンダードですよね。でも山梨の農家さんに聞いたら、柔らかい桃食べたことないという話をされて。どれくらい硬いのかと聞いたら、りんごくらい硬いと。

谷津:
硬い桃と聞いたら、ふつう「熟すまで待とう」ですよ!笑

谷川:
そうですよね。笑
ただこれにも理由があって、硬い段階で収穫して流通過程で熟していくから、消費者の元に届くときにはやわらかいものしかないんですよ。
試しにOWNERSのインスタで硬い桃の写真をあげてみたら、とても評価されたんですね。
山梨の直売所で食べたパリパリするくらいの桃に感動して東京でも食べたかったんです、というお客さんもいらっしゃって。

そこで「硬い桃を食べたことがありますか?」というコンセプトで、実は産地の山梨ではこういう食べ方をしていて、という紹介をしました。

https://owner-style.com/plan/116(現在は募集終了)

届いた直後は硬いけど、熟したかったらしばらく待って柔らかいのを食べてもいいという楽しみ方を提供しました。
コンセプトの伝え方とつなぎ方を工夫すれば、ランクAの「本当にいいもの」を作ることができるんです。

◆コーディネーターの課題とは?

谷津:
農業や食をテーマとする地域おこし協力隊の課題が何かと言うと、農家さんがIT使えないことです。
ITがわからないと、OWNERSというプラットフォームを活用して東京に売りますよという事業計画を持っていっても、相手にされない。既存の繋がりがあるからと断られてしまいます。
そうすると任期が3年しかないのに、まず百貨店の開拓とか始めてしまうんですよ。でも百貨店もバイヤーがいますから、今度はバイヤーに認められるために活動しようと。結局、バイヤーの集まる交流会に行って名刺交換を一生懸命するんだけど成果につながらない、なんて本質的ではない活動になってしまいます。

マーケットがあると活動の信頼度は上がってくるので、自治体と連携しながらOWNERSを販路として活用していくことが大事だと考えています。

◆既存の農家さんとは違う立ち位置をつくる

谷津:
移住・交流推進機構(JOIN)という一般社団法人が、地域おこし協力隊の募集を取りまとめています。そこで「食・農業」と調べてみるとわかりますが、数百件ある中で、新規就農がとても多い。
なぜかというと、3年間は国の制度で地域協力隊として受け入れ、4年間は農業の別制度を使えるからです。自治体にとっては、協力隊として3年間チャレンジしてもらうより、7年間国のお金を使って農家に育てる方が効率いい。

でも、ルーツが農家ではない人たちが急にガチ農家をやるのはハードル高いと思っています。先輩の農家さんと同じ土俵でやっても認めてもらえないので。
既存の農家さんとは違ったスキルを持ち農業に関わることで自分の立ち位置を作れると、地域に入って受け入れてもらえるようになるんですね。

食農コーディネーターとして食の活動に3年間取り組めたら、協力隊の任期後にOWNERSで食べていけるようになるだけでなく、例えば自分で店舗を持つとか、そういうきっかけができるようになります。

もう最後の方になってくるんですけど、早くおにぎり食べたいですよね。

会場:
(笑)

谷津:
最後に谷川さんの方から、OWNERSとして力を入れて取り組んでいる共同購買の話をしてもらいたいと思います。

◆共同購買で、効率的なオペレーションを

谷川:
OWNERSは、生産者がプランを出して、消費者は共感したら申し込むという仕組みです。
契約期間が終わると、来年また申し込んでくれるとしても、一旦解散。

ukkaが目指しているのは、東京に育ったとしてもいろんな地方に故郷と言えるような生産者さんとのつながりがあり、応援するような関係になれる世界です。
毎年申し込まなくても、来年もOWNERになることが簡単にでき、関係性を継続できる仕組みづくりをしていきたいです。
プラン単発ではなくサブスクリプションとして、生産者さんの売り上げの固定化にもつながりますし、むしろリピートするお客さんが広げてくれるような状態を目指せるのではないかと。

これはウェブ上でのマッチングの話ですが、今新たに、マンションでの仕組みづくりを始めてます。

谷川:
きっかけは、生産者の配送先リストに、同じマンションなのに別々に頼んでいるお客様がいたことでした。
注文が別だから配送も別々に送っているのを見て、めちゃくちゃ勿体無いと思ったんです。

物流費が上がっている一方で、個人での直販はキャパシティが限られます。売れるものはたくさんあっても、オペレーションが大変で供給量が小さくなっているという課題です。これは、生産者とお客さんのコミュニティを直接つなぐことで解決できます。

生産者がまとめて送り、マンションの住人たちが共同購買してシェアする仕組みであれば、生産のオペレーションは効率化されて、もっとたくさんのものを届けていけます。

◆マンションでのリアルな場づくりから、オンラインへ

谷川:
都市部のマンションには、田舎がなかったりで、人とのつながりで本当にいいものを手にする機会がない人たちが多く住んでいます。
そこでの共同購買を大手不動産会社さんになんとかやりたいと話をしてきて、まずやったのが岩手県一関市と組んだイベントです。

1棟で500世帯入ってるツインタワーマンションで一関市の生産者さんがキャラバンし、お客さんの生活に直接入り込んでいく。住民の方は、食べてみて美味しかったものをOWNERSで買いたくなるような、リアルで体験してからオンラインで継続する取り組みとして、地域のことを知っていただきました。
こういったイベントの先に共同購買をやりたくて、まずは都内マンションで「OWNERSご近所マーケット」という取り組みを始めます。

谷川:
生産者のこだわり食材を紹介して、全3回の事前注文をまとめ、住民みんなで受け取ってシェアして……注文者が集まったときに会話が広がるような仕掛けも考えています。
今年は首都圏マンションを中心に大きく仕掛けようとしていて、マンションの管理組合からうちでもやってくれないかというお話をいただいたりもするのですが、私たちとしても関係を作っていきたいと思っています。

◆地方の課題解決が、東京の課題解決につながる

谷津:

地域活性の文脈になると、どうしても地域側の課題の話が多くなりますが、東京側の課題も結びつけて話をしたいんですよね。
東京にマンションがどんどん立ってる中で、居住空間としてマックスまで使っているので、あとは室内の家具をどうするかとかの話しかありません。

でもマンションの価値を上げて行くために、例えば地方自治体とつながっていると、その地方出身の住民が住んでたりするんですよね。
自分の出身地の生産者さんが自分のマンションの中庭で出店してくれるなら、東京駅だと商品を買って終わりだけど、遊びに行く関係性が出来たり、ツアーが出来たり、新たなサービスが生まれる可能性がある。地域と東京をつなぐことで、東京の課題を解決することも可能になるわけです。

時代が寄り戻されていると思っていて、10年前は人と出会わないで済むデザイナーズマンションが流行ったけど、今は地域との繋がりを求めています。
高価格帯のマンションだと、ふだん住民と会わないけれど、共同購買の仕組みを活用することで、例えば子どもを持つ世帯で「このオレンジ美味しい!」とかの出会い方が出来たりする。これってとても素敵だと思っていて、時代にマッチした繋がり方ですよね。

僕らが目指すのは、地域に入るコーディネーターを増やすことで、食を中心とした地域での活動をやりたいという方が3年間はベーシックインカムをもらいながらチャレンジできる環境を作ろうとしています。
こういう仕組みを考えて伴走していきながら、食で地域を盛り上げて行きたいと思っています。

これが今日お伝えしたかったことです。
懇親会では、OWNERSのこだわり食材を使ったおむすび・お味噌汁をいただきながら、質疑応答に入ります。

◆食農コーディネーターの具体的な仕事は?

谷津:
協力隊の制度面でいうと、自治体との契約次第にはなります。
僕たちは募集の段階から寄り添いますが、大事なのはミッション。これが就農とか限定的なものになってしまうと、活動の幅が狭まってしまいます。

谷川:
地元との関わりがない状態でいきなり地域に飛び込むより、地域おこし協力隊として入り込む方が説明がしやすいです。
地域の生産者さんにOWNERSの話を持っていくときも、現地の人たちにどうやって共感してもらうかを悩みつつ動きつつで、最初は苦労しました。

あと大事だと思うのは、地域の人たちと価値観を合わせていくこと。
例えば、地域を知らない人たちってB級品を捨ててると勘違いして、B級品でいいから仕入れさせてというレストランが出て来たりしますが、農家さんはちゃんとした正規品を買ってほしいと思っています。
お互い目指すところが同じでもすれ違ってハレーションが起きてしまうので、自治体と連携して公的な人間として送り込み、教育研修で育てていくことが必要なのです。

◆マンション以外で拠点になりうるのは?

谷川:
例えば、イケてるシェフを集めて共同購買の仕組みを作って、小さい店同士が材料まとめて仕入れることはできると思います。
同じ食材でも、中華、イタリアンなど業態が違えば、食べ方が全く変わってくるんですよね。
この店はこういう出し方をしているとか、お客さんの美味しかった様子とかをアプリで生産者が簡単に見ることができると、共同購買からBtoBが発生する可能性があるのではないでしょうか。

谷津:
僕たちは早稲田・江戸川橋の飲食店さんと繋がっているのですが、先日お聞きしたことで、メニューに変化をつけたいけど、大量に購入してるから変化をつけられないという話がありました。
メニューを変える時に、生産者の情報が見えるお店としてやれると嬉しいんだけど、でも繋がれないんですと言うんですね。
なぜなら農家さんに連絡入れると、コミットできないと嫌がられるから。生産者からすると供給が安定しないし、飲食店としても100%買取できる補償がない。店舗あるから時間もないし。

谷川:
同じレンジの飲食店は繋がっているんですよね。そこはすごくまとめやすい。
レストランも真面目なので、生産地の現場見たいと言っても個人ではなかなか行けないので、まとめたグループを作れるといいと思います。

谷津:
僕らはこの取り組みを完全パッケージとしてやっていきたいわけじゃなくて、これから作って行こうと思っているところです。

今回、せっかく少人数で集まれたので、食農コーディネーターに関わらず一緒にできることやチャレンジを共有し合えるようなグループになっていけばいいなと思います。

OWNERS KITCHENでは、食と農にまつわる地域課題を解決しながら、都会に向けた販路開拓やPR活動ができる人材育成にご興味のある方をお待ちしています。

自治体関係の方や、ご自身が地域おこし協力隊として活動を検討されたい方など、下記までお気軽にお問い合わせください。
OWNERS KITCHENの次回開催についても、決まり次第お知らせします。

▼食農コーディネーターについてのお問い合わせはこちら
sakai@bono.co.jp(ボノ株式会社 坂井)